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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2017/06/25/Sun
廊下ですれ違う。街中ですれ違う。気付くまで君と、私は他人。気付いてるよ。気付いてよ。握った手を、もう一方の手で包む。雑踏に消える君。呼び止めようと駆け出す私。君の名前を叫ぼうと大きく息を吸い込み、この切なさ(君の名前)に、愛を込めて。

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2016/08/03/Wed
左の太陽がいいました。
「もう昇るのは疲れました。明日からはお月さんが昇りますので、どうぞごひいきに」
太陽がすぐ沈むと、月がすぐ昇りました。月は泣いていました。
「私はずっと太陽さんと一緒だったのに、太陽さんが疲れていたなんて知らなかった。気づいてあげられなかった」
月の涙は悲しみの涙ではなく、悔しさの涙でした。

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2016/08/03/Wed
舟と呼ぶには頼りない、というのが最初の印象だった。舟を組む木板は長く潮と風にさらされていたせいで脆く、腐食でいつ転覆してもおかしくはない。
 深まる謎を追って舟を観察すると、舟の中に仰向けの『少女』がいた。
 プラチナブロンドの短い髪。瞳は豊かなまつ毛の下にあるため確認できないが、白いワンピースから伸びる四肢は生白く、腹部の上で組んだ両手は細かった。
 朽ちる木板と少女の白さ。体から違和感と恐怖と、僅かばかりの好奇心が湧いた。
 なぜこんな辺鄙な島の浅瀬に、こんな舟が流れてきたのか。この少女は一体何者なのか。死体であるならそれなりの処置を行うべきだが、まるで波に流された年月が少女の中で止まっているようで。
 少女に手を出すべきか、否か。迷った挙句、少女から視線を逸らすことで『否』を選択した。
「触れぬのか、我に」
 耳が音を捉え、頭の中で『声』と認識するまで数秒を要した。
 後方に下がり、 舟から距離を置く。浜の荒い砂がザッと鳴った。
「別に食ったりはせぬよ。無益な殺生にはもう飽きたからのぉ」
 舟からの声。いるのは少女。興を削がれた貴婦人の口調に生気はあるが、覇気はない。
 再び舟に近づき、おそるおそる覗き込む。少女は姿勢を崩さず、短い髪と豊かなまつ毛を潮風の吹くままにしていた。唇は肌の白さと同化して、やはり覇気がない。
「……死ぬのか?」
 初めて少女に問うた。少女が唇を開くと、小さい犬歯がこちらを覗いた。
「言ったはずだ。無益な殺生に飽きた、とな」
「……『生きること』に飽きた、ということか?」
「そうだな。お前の解釈を引用するなら、確かに『飽きた』」
 潮風に一層煽られる。そろそろ満潮の頃か。浅瀬とはいえ、ここも時期に海に沈む。
「潮が満ちてきたな」
 少女の声には嬉しさと楽しさがあった。少女は口角を持ち上げ、犬歯を露にする。
 潮の満ち引きに舟が揺れ、キイキイと鳴っては不安を煽る。舟を抑え、満ちる波に耐えたが、今度は少女の皮肉が耳に届く。
「この時、人間は瀕死の相手を助けるらしいな。種族、事情、救出した後のことも考えず」
「それは……愚かなことなのか?」
「問うばかりの貴様に答えなどくれてやるか」
 投げやりな言葉にも覇気はない。でも、生気があるなら。
「浅はかよな、人間。浅はかで、愚かで、身勝手で――なっ!?」
 瞬間、舟に穴が開かんばかりの衝撃が、木板と少女を揺さぶる。少女は異変に上体を起こし、豊かなまつ毛を瞬かせた。まつ毛の下の瞳は、丹精込めて磨いた宝石のように輝いている。
 間近で見ると、宝石は新芽のように初々しく、少女の胸の内を透かすほどに透明だった。少女との距離は、鼻先が当たるぐらい近い。
「……これは我が方舟ぞ。貴様のようなものに乗る資格などない」
 少女自ら距離を置き、新芽に似た宝石がまつ毛の下からこちらの様子を窺う。
「人間は浅はかに、愚かに、身勝手に生きる。そして、誰かを助けたくなる。なんでだろ、愚かで、偽善的なのに」
 伸ばした手の行く先は、少女の頭の上。陽に焼けて黒くなった手は、少女の髪をわしわしと乱す。
 少女はすぐ瞳をまつ毛の下に隠したが、やがておそるおそる瞳を露にする。
「最初から、こうして欲しかったんじゃないのか?」
『触れぬのか、我に』
 自ら口にした少女は、しかしその手を払い除けた。
「……貴様、血の一族に対する無礼ぞ」
 視線を逸らし、自分の手で髪を整える少女の声には生気があった。でも覇気はない。
「降りろ人間。じきに舟が流れる」
 髪を整えた少女が、舟の向こう側を見る。振り返ると、潮が足も届かぬほどに満ちていた。
「生きるための殺生に罪を感じているなら、それは間違いだ」
 満ちる潮に、流れる潮風に、揺れる舟に呟く。
「死ねば、お前たちの誇りはどうなる?」
 少女は無言だった。お互い無言になると、キイキイと木板の悲鳴が目立って聞こえる。
「――死してなお誇りを守れれば重畳、では駄目か?」
背中に受けたのは、少女らしからぬおどけた声。あまりの不確かさに抗議しようと口を開き、なぜか浮遊感に包まれた。
「すまん人間。我も人間と、さほど変わらぬわ」
 どの点で、人間と少女が変わらないのか。教えて欲しいと問う声もあぶくになり、水面を隔てて遠くなる少女に手を伸ばすことしかできなかった。
 潮を吸って重くなった服のまま、なんとか水面に顔を出すと、少女を乗せた舟が小さく見えた。このまま海へ向かうのだろう。
 突然の浮遊感に驚く間もなかった。舟の揺れに気づかず落ちたのか、はたまた少女が背中を押して……。
 濡れた前髪を掻き上げ、目を凝らす。一見すると誰も乗っていないように見えるが、初めて見た時と同じ体勢の少女が頭を過ぎる。
 少女にしては短い髪で、豊かなまつ毛の下には新芽の輝きを持つ瞳。白いワンピースだったのは、己の穢れを知るが故に選んだのだろうか。
「方舟、か」
 大洪水によって一度世界は洗い流され、勤労だったノア一族と番の動物たちだけ助かった、神の舟。
 少女はそれに乗っている。死してなお誇りを守れれば重畳では駄目か、と言って。
 だんだん笑いがこみ上げてきた。ハンッと鼻で笑うと、道具を潮の底へ手放してから舟を目指して泳ぎ始めた。
 人間とさほど変わらないだと。お前の方が人間より浅はかで、愚かで、身勝手だ。人には質問ばかりだとか言っておきながら、自分だって他人の言葉を借りて答えていたじゃないか。
 笑いが怒りに変わるのはさほど遅くはなかった。潮の抵抗で速くはないが、着実に舟へと近づいている。さすがに呼吸も乱れてきたが、番のいない方舟で行けるところなど、たかが知れている。
 舟にたどり着いたら、少女にこう言ってやるのだ。生きたいのなら生きろ。生きてから、誇りと一緒に死ね。
 嗚呼でも、こう言った方がいいのかもしれない。
「――ばぁか!」

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2016/06/12/Sun
(第一回ショートショート大賞応募(落選)作品です)


 新谷くんはヘンです。
 小学校の頃から落ち着きがないし、イタズラ好きで騒がしいです。授業中に他の男の子と話をすることはしょっちゅうで、女の子の筆箱に虫のおもちゃを入れたりすることもあります。その度に先生は注意します。新谷くんもその時だけはしょんぼりした顔をしますが、次の日にはケロッとしてまた先生に注意されます。
 新谷くんは他の人より口が大きく、笑う時はその口を大きく開けて「ガハハ!」と笑います。授業中に新谷くんが笑うと、わざわざ隣のクラスの先生がやってきて、「新谷、うるさいぞ」と注意するくらいです。
 中学校に進学しても、新谷くんは小学生の時と変わらないくらい騒がしくて、イタズラ好きでした。同じ小学校の子も進学したのもあって、新谷くんと一緒にイタズラをして先生に怒られる男の子たちや、私のように新谷くんのことを知っている女の子たちは、「また新谷くんたち、やらかしたんだね」と言って笑っていました。
 中学二年生になっても、中学三年生になっても、新谷くんは相変わらずヘンでした。でも、新谷くんと同じクラスの子たちは、新谷くんの様子を冷めた目で見るようになりました。新谷くんを注意していた先生も、だんだん新谷君くんを無視するようになりました。
「いいかお前ら、今年は大事な時期だ。落ち着いて日々の勉強をこなせば、絶対高校受験を乗り越えることができる。まあ、どこかの誰かは中学三年生にもなって落ち着きがないがな」
 先生が新谷くんに嫌みと、何人かの子は新谷くんを見てクスクス笑いました。新谷くんは気にした様子も、自分が入れていると思っていない顔で「ガハハ!」と笑いました。
 数日後、新谷くんは風邪を引いて学校を休みました。新谷くんと同じ住宅街に住んでいる私は、新谷くんに渡すプリントを鞄に入れて、新谷くんの机を見ました。机には『バカ』『うざい』『しね』の文字が、遠目から見ても分かるぐらいハッキリと書かれていました。
 私は学校を出て、まっすぐ新谷くんの家に行きました。チャイムを鳴らすと、新谷くんのお母さんが出てきました。
「あら、マキちゃん。いらっしゃい」
「こんにちは、おばさん。学校のプリントを届けにきたんですけど、新谷くんはいますか?」
「いるわよ。マサヨシ! マキちゃんが来たわよ!」
 新谷くんから返事がありません。新谷くんのお母さんは、「なにもお構いできないけど、入って入って」と言って私を招きました。
「新谷くん、風邪を引いてるんですよね?」
「アハハ! あの子にだって、適当に理由付けて学校行きたくない時ぐらいあるわよ!」
 新谷くんのお母さんは、新谷くんと比べて小さい口をしていますが、口を大きく開けて笑う癖はそっくりです。
 新谷くんのお母さんに案内されて、私は新谷くんの部屋のドアを開けました。部屋には、足の踏み場がないくらいたくさんの紙飛行機がありました。
 新谷くんは、大量の紙飛行機の中で、さらに紙飛行機を量産していました。
「村上? お前がうちに来るなんて小学生ぶりだな。ガハハ!」
 新谷くんは相変わらず、大きい口をさらに開けて笑いました。
「どうしたの? こんなに紙飛行機折って」
 私は驚きのあまり、新谷くんが休んだ理由ではなく、紙飛行機を折っている理由を聞きました。
「村上。小学生の時、社会科見学で鍛冶屋に行ったこと覚えてるか?」
「えっと……ごめん、覚えてないかも」
 私が謝ると、新谷くんは気を悪くした風もなく「ガハハ!」と笑いました。
「その時、鍛冶屋のおじさんに言われたんだ。人も熱した鉄みたいに、打てば響くって。俺がイタズラしたりすると、先生は怒ってくれたし、クラスのみんなは笑ってくれたりしてた。でも中学生になってから、俺がイタズラしても、先生は無視するようになったし、クラスのみんなは何も言わなくなった。陰で何か言ってるみたいだけ、それを俺に言わなくなった。打っても響かない、鉄屑になっちまった」
 私は新谷くんの机に書かれていた文字を思い出して、ギクッとしました。新谷くんは腕を組みました。
「俺は考えた。みんながまた熱した鉄みたいに、打てば響くようになるにはどうしたらいいか。そして思い出したのが、これだ」
 その答えと言わんばかりに、新谷くんは組んだ両手を開きました。
「卒業式の日に、屋上から紙飛行機を飛ばすんだ。鉄屑になっちまったみんなも、さすがにクリビツギョーテンするだろ。ガハハハハ!」
 新谷くんは、まだ実行していない計画を前に大声で笑いました。計画の成功を確信している笑い方でした。
 私は唖然として新谷くんの話を聞いていましたが、ふと、紙飛行機に赤いペンで何か書いてあることに気がつきました。開いてみると、思わず笑いがこぼれました。
「……ふふっ」
「なんだ?」
 その開いた紙飛行機を、新谷くんに見せました。
「『祝・卒業!』の『祝』が『呪』になってる」
「ホントだ。ガハハハハ!」
 新谷くんは自分の間違いにも大きい声で笑いました。私も釣られて笑うと、『祝』の字が『呪』になっていないか確認する係を務めました。
 新谷くんは「手が痛くなってきたぜ! ガハハ!」と笑うまで、赤いペンで『祝・卒業!』を書いては、紙飛行機を折り続けました。
 私はやっぱり、新谷くんはヘンだなと思いました。

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2016/02/08/Mon
メーデーメーデー、聞こえますか。月の裏側にいる「わたし」聞こえますか。もしあなたが本当にいるなら、寝ても寝ても寝足りない私を助けてください。天秤が壊れる前に助けてください。私をベッドの中から救い出してください。

メーデーメーデー、エスオーエス。

(創作企画・「空へ」参加)

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