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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2017/10/12/Thu
『人の涙から作られた地図=トポグラフィー・マップ』
『トポグラフィー・マップを作る職人=トポグラフ・マッパー』

これは、『トポグラフ・マッパー夢原涙子』と、彼女に出会った人々のオムニバス現代ファンタジー。
そして、地下のアリスが迷えるウサギたちに捧ぐ物語。

【更新履歴】
◆2016/08/11:連載開始のお知らせ
◆2016/09/02:第一章終了→10月まで連載休止
◆2016/10/01:第二章より連載再開のお知らせ
◆2016/11/01~:福岡創作イベント『Collage Event Ade7』への委託販売作業(第一章~第三章までのコピー本)のため連載休止
◆2016/12/07:『Collage Event Ade7』にて委託販売のお知らせ&第三章冒頭先行公開
◆2016/12/13~:第二章第二話以降の連載再開
◆2016/12/16:自家通販予約受付開始のお知らせ(第三章までのコピー本)←12/30に締め切りました
◆2017/01/18:第三章・第二話より連載再開
◆2017/01/29:第三章終了→2月いっぱいまで連載休止(再開日は未定)
◆2017/10/12:第一章改題・『小説家になろう』への掲載を始めました

【目次】
◆第一章:タイムマシンの作り方(旧題:トポグラフ・マッパー夢原涙子)
一、ウサギがアリスに出会ったら
二、ウミガメスープを飲み干して
三、誰がタルトを盗んだか
四、身を知る雨に猫が鳴く (了)
あとがき&連載休止のお知らせ

◆第二章:はねっかえりバタフライ
一、夜の蝶だった頃
二、思い出になる前に
三、青年期の終り
四、夢の中へ (了)
あとがき&第三章連載について

◆第三章:残滓
(まえがき)
一、せちがらい、よのなかのはなし
二、においのもと
三、ゆれるきんぎょそう
四、うつつのゆめ (了)
あとがき&第四章連載について

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2017/02/01/Wed


1月が終わる前にあとがきを書き終えたかったのですが、間に合いませんでしたorz

というわけで、1月29日に『トポグラフ・マッパー 夢原涙子』第三章が終了いたしました。
第三章は福岡創作イベント『Collage Event Ade7』への委託販売のため、第一章と第二章とともにコピー本として頒布させていただいた作品です。
どうも自分の作品語りというのは苦手で、コピー本に書いたあとがきだけの内容が精一杯です…orz
(どんな内容かは、第一章~第三章までのコピー本の自家通販にて予約していただいた皆様でご確認していただけたなと。特に後半がとてもくだらないので)

第四章の連載についてですが、2月から新生活に向かうため(と、参加しているアンソロの〆切を大幅に勘違いしていたので、今から執筆しなきゃ間に合わなげふんげふん)またまた休止させていただきます。
第三章では『夢原涙子』の出生について触れましたが、第四章では『いかにして彼女が夢原涙子になったのか』を掘り下げる特別編となっておりますので、連載再開までどうぞお楽しみに。

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2017/01/29/Sun
「今のお前は『夢原涙子』で、俺は赤の他人だか、あの頃の俺達は確かに姉弟だったんだ。お前が『夢原涙子』で居続けるなら、俺はいつでも力になる。だ、だから、その、なんだ……」
 急に今の状況が恥ずかしくなり、思わず口籠もってしまった。顔も心なしか熱いし、姉さんは俺の様子を察して笑っているし。
 悔しくなって姉さんの髪をわしわし乱すと、姉さんもふざけて「ぎゃー」と言った。
「だから、お前が俺を『おじ様』と呼んでいる間くらい、心配させてくれってことだ。夢原」
 俺の手から解放され、ぐしゃぐしゃになった頭を抱えた夢原は、気恥ずかしいような、照れたような笑顔を浮かべて「はい」と応えた。
 本当に分かっているのは疑わしいが、取り敢えず信じることにしよう。それが夢原にとっても、『夢原涙子』になる道を選んだ姉さんにとっても、きっといいことだから。

 ちなみにタカナシはというと、コンビニで会計を済ませた後、仲睦まじそうにしている俺と夢原の邪魔をしないよう、コンビニの雑誌を立ち読みして時間を潰していたらしい。
「いやぁ、ホズミさん。ごちそうさまでした」
「うるさいっ」
「ははははは」
 両手を合わせるタカナシに向かって握り拳を上げた後、自分の昼飯を買うため、俺はコンビニへと入っていった。
 ついでに『持つべきものは有能な部下だ』という発言も訂正しよう。部下は持つべきだが、扱い方に注意せよ。特に有能な奴は、こちらの足元を見ることがあるのでなお注意されたし。以上。

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2017/01/29/Sun
「ヒサヒコ。姉さんを愛してくれてありがとう」
 姉さんが俺の名前を呼んだだけで、今度は心臓が跳ね上がった。俺が言うべき台詞を、姉さんは俺の代わりに代弁した。
「本当は、家族みんなに愛してほしくて、みんなと家族になりたかった。でも、頑張れ頑張るほど、お母様は私を突き放した。そうすることでしか、自分の癒すことができないと、頑なに思ってらっしゃったわ」
 姉さんは、物心付く前から、自分が望まれて生まれたわけではないことを知っていた。親父に置いていかれてからは、お袋から愛されたがっていた。そのためにならどんなこともした。その努力を、兄貴と俺は知っている。
 だがお袋は姉さんを憎み、兄貴が倒れてから、一層その憎しみを深くしていった。それでも姉さんはお袋から愛されたかった。親父に裏切られ、傷ついたお袋を愛したかった。
「お兄様とヒサヒコは私を愛してくれたけど、お母様は一人ぼっちだった。当たり前よね? 私がお母様を傷付けたのだから。家を出てからは、罪悪感で頭がいっぱいだったわ」
 姉さんも俺と同じように、悔いを残してあの家を出た。取り戻せない時間を、残りの時間に費やした。
 だが姉さん、と俺は声を絞り出すように言った。
「そんなことしたって、終わった時間は取り戻せない。第一、姉さんが生まれたのだって、元々は親父のせいだ。親の責任を、子どもが償う必要はないんだ」
「そうね。姉さんも、だいぶ後になって知ったわ」
 だいぶ後。大人になってから、という言い方を避けるように、姉さんは笑った。笑って、俺を見上げた。
「だから私には、『夢原涙子』が必要だった。私が私として生きるためには、『夢原涙子』にならなければいけなかったの」
 姉さんは吹っ切れたように言うが、そこに至るまで、姉さんはどれだけお袋のことで胸を痛めたのだろう。俺の想像を超えるものだったのかもしれない。
「あの時、『生まれてこなければよかった』なんて言ってごめんね。大丈夫。もう心配いらないから」
 まるで惜別の言葉だ。そう言って離れようとする姉さんの頭に、俺は軽く手を置いた。
「馬鹿。心配いらないって言ってる奴が一番危ないことぐらい、お前だって知ってるだろ」
 驚いた顔の姉さんを久しぶりに見た。俺だって驚いている。でも、今だから言える言葉を伝えたかった。

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2017/01/29/Sun
「なるほど。出歯亀とは、さすがタカナシさんですね」
「お前も感心するな。立派な職権乱用だ」
 ニシムラ・リュウジの身柄を警察署に送った後。昼食を買いにタカナシとコンビニへ入る手前、例のツナギにダッフルコートを羽織った夢原と出くわした。
「ふふ。タカナシさん、そういうのお上手ですからね」
「本人に言ってやるなよ。ただでさえ調子に乗ってるんだから」
 タカナシは先にコンビニへ入り、アンパンと二百ミリリットルの牛乳パックを手に、会計の列に並んだ。まったく、昔の刑事ドラマじゃなるまいし。
 外からコンビニの店内を眺めながら、俺は口を開いた。
「……姉さん、いつまでこんなことを続けるつもりだ」
 隣にいる相手に聞こえる程度の声で言ったつもりが、声のトーンから俺が怒っていると思ったらしく、夢原――姉さんは「心配かけてごめんね」と言った。
 別に謝ってほしいわけじゃない。俺は後ろ頭を掻き、言葉を探す。
「いや、俺はただ、姉さんには静かに暮らして欲しいと……」
 どもってしまった俺と、小さい姉さんの姿がガラスに映る。姉さんは、困ったように笑っていた。
 俺は、ニシムラ・リュウジのような言葉をかけることはできないし、言葉にするにも時間をかけ過ぎた。
 その時間は、俺と姉さんの間に壁を作った。俺は老いに向かって歳を重ね、姉さんだけ、あの頃の姉さんのまま。だから、俺もあの頃の俺で接することはできない。
 もし、ニシムラ姉弟のように、俺も姉さんとずっと一緒にいられたら。もし、俺がホズミの家に養子として行かなければ。俺は、姉さんを救うことができただろうか。
 腹立たしい。現在が。今の姉さんが。何もできない自分が。本当に腹立たしい。
 奥歯を噛み締めていると、タカナシが会計の先頭に立った。それを見計らうように、姉さんは両手を後ろに組んで、俺の懐に飛び込んできた。
 喉の奥から変な声が出て、一瞬心臓が止まった気がした。姉さんの体を支えようと腕を伸ばしたが、力が入らなかった。
「姉さん。馬鹿な真似はよしてくれ」
「なにが馬鹿なものですか。もうこんな機会はないのよ?」
 力なく項垂れる片腕を持ち上げ、手で顔を覆った。こんなところ、タカナシに見られたらどうするつもりだ。
「人の気を知ってて……本当に、姉さんはずるい」
「んふふ~」
 顔をぐりぐり押しつける姉さんを、俺は受け入れることも、突き放すこともできない。情けない。こんな顔、誰にも見られたくない。

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