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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2016/06/12/Sun
(第一回ショートショート大賞応募(落選)作品です)


 新谷くんはヘンです。
 小学校の頃から落ち着きがないし、イタズラ好きで騒がしいです。授業中に他の男の子と話をすることはしょっちゅうで、女の子の筆箱に虫のおもちゃを入れたりすることもあります。その度に先生は注意します。新谷くんもその時だけはしょんぼりした顔をしますが、次の日にはケロッとしてまた先生に注意されます。
 新谷くんは他の人より口が大きく、笑う時はその口を大きく開けて「ガハハ!」と笑います。授業中に新谷くんが笑うと、わざわざ隣のクラスの先生がやってきて、「新谷、うるさいぞ」と注意するくらいです。
 中学校に進学しても、新谷くんは小学生の時と変わらないくらい騒がしくて、イタズラ好きでした。同じ小学校の子も進学したのもあって、新谷くんと一緒にイタズラをして先生に怒られる男の子たちや、私のように新谷くんのことを知っている女の子たちは、「また新谷くんたち、やらかしたんだね」と言って笑っていました。
 中学二年生になっても、中学三年生になっても、新谷くんは相変わらずヘンでした。でも、新谷くんと同じクラスの子たちは、新谷くんの様子を冷めた目で見るようになりました。新谷くんを注意していた先生も、だんだん新谷君くんを無視するようになりました。
「いいかお前ら、今年は大事な時期だ。落ち着いて日々の勉強をこなせば、絶対高校受験を乗り越えることができる。まあ、どこかの誰かは中学三年生にもなって落ち着きがないがな」
 先生が新谷くんに嫌みと、何人かの子は新谷くんを見てクスクス笑いました。新谷くんは気にした様子も、自分が入れていると思っていない顔で「ガハハ!」と笑いました。
 数日後、新谷くんは風邪を引いて学校を休みました。新谷くんと同じ住宅街に住んでいる私は、新谷くんに渡すプリントを鞄に入れて、新谷くんの机を見ました。机には『バカ』『うざい』『しね』の文字が、遠目から見ても分かるぐらいハッキリと書かれていました。
 私は学校を出て、まっすぐ新谷くんの家に行きました。チャイムを鳴らすと、新谷くんのお母さんが出てきました。
「あら、マキちゃん。いらっしゃい」
「こんにちは、おばさん。学校のプリントを届けにきたんですけど、新谷くんはいますか?」
「いるわよ。マサヨシ! マキちゃんが来たわよ!」
 新谷くんから返事がありません。新谷くんのお母さんは、「なにもお構いできないけど、入って入って」と言って私を招きました。
「新谷くん、風邪を引いてるんですよね?」
「アハハ! あの子にだって、適当に理由付けて学校行きたくない時ぐらいあるわよ!」
 新谷くんのお母さんは、新谷くんと比べて小さい口をしていますが、口を大きく開けて笑う癖はそっくりです。
 新谷くんのお母さんに案内されて、私は新谷くんの部屋のドアを開けました。部屋には、足の踏み場がないくらいたくさんの紙飛行機がありました。
 新谷くんは、大量の紙飛行機の中で、さらに紙飛行機を量産していました。
「村上? お前がうちに来るなんて小学生ぶりだな。ガハハ!」
 新谷くんは相変わらず、大きい口をさらに開けて笑いました。
「どうしたの? こんなに紙飛行機折って」
 私は驚きのあまり、新谷くんが休んだ理由ではなく、紙飛行機を折っている理由を聞きました。
「村上。小学生の時、社会科見学で鍛冶屋に行ったこと覚えてるか?」
「えっと……ごめん、覚えてないかも」
 私が謝ると、新谷くんは気を悪くした風もなく「ガハハ!」と笑いました。
「その時、鍛冶屋のおじさんに言われたんだ。人も熱した鉄みたいに、打てば響くって。俺がイタズラしたりすると、先生は怒ってくれたし、クラスのみんなは笑ってくれたりしてた。でも中学生になってから、俺がイタズラしても、先生は無視するようになったし、クラスのみんなは何も言わなくなった。陰で何か言ってるみたいだけ、それを俺に言わなくなった。打っても響かない、鉄屑になっちまった」
 私は新谷くんの机に書かれていた文字を思い出して、ギクッとしました。新谷くんは腕を組みました。
「俺は考えた。みんながまた熱した鉄みたいに、打てば響くようになるにはどうしたらいいか。そして思い出したのが、これだ」
 その答えと言わんばかりに、新谷くんは組んだ両手を開きました。
「卒業式の日に、屋上から紙飛行機を飛ばすんだ。鉄屑になっちまったみんなも、さすがにクリビツギョーテンするだろ。ガハハハハ!」
 新谷くんは、まだ実行していない計画を前に大声で笑いました。計画の成功を確信している笑い方でした。
 私は唖然として新谷くんの話を聞いていましたが、ふと、紙飛行機に赤いペンで何か書いてあることに気がつきました。開いてみると、思わず笑いがこぼれました。
「……ふふっ」
「なんだ?」
 その開いた紙飛行機を、新谷くんに見せました。
「『祝・卒業!』の『祝』が『呪』になってる」
「ホントだ。ガハハハハ!」
 新谷くんは自分の間違いにも大きい声で笑いました。私も釣られて笑うと、『祝』の字が『呪』になっていないか確認する係を務めました。
 新谷くんは「手が痛くなってきたぜ! ガハハ!」と笑うまで、赤いペンで『祝・卒業!』を書いては、紙飛行機を折り続けました。
 私はやっぱり、新谷くんはヘンだなと思いました。

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