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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2016/08/11/Thu
午後五時三十分。急な階段と、縦長の壁に反射する靴音が焦る気持ちに拍車をかける。
 茶色く汚れた階段を降り切ると、中は上から見上げた時よりも暗い空間が広がっていた。目の前に扉らしきものが薄ぼんやり見える。ここが行き止まりで、入口らしい。
 僕は袖をまくって腕時計を確認した。午後五時三十二分。迷路のように入り組んだ道に惑わされたせいで、あと二十八分しかない。
 ここに来るまで、葛藤らしい葛藤がなかったわけじゃない。でも時間は待ってくれない。限られた時間を賭しても、僕は彼女に会わなければならない。
 トポグラフ・マッパー夢原涙子。彼女は、僕の大事なものを探してくれるのだろうか。
「はーい」
 扉らしきものをノックすると、向こう側から間延びした声が聞こえた。

 迎えてくれたのは、小さい女の子だった。
 僕も男子高校生にしては百六十センチぐらいしかないが、彼女は輪をかけて小さかった。いや、小さいというより――。
(しょ、小学生?)
 太ももが露わになった裾の短いオーバーオール。白いTシャツの上からピンクのパーカーを羽織った小学生が、僕の目の前にいる。
 人のことは言えないが、なんでこんなところに小学生がいるのか。思ったままの言葉が出そうになった時、先に女の子が口を開いた。
「あのー、依頼人の方ですか?」
「は、はい」
 反射的に答えてしまった後、今度は僕から女の子に尋ねた。
「えっと、夢原涙子さんの妹さんですか?」
「いえ。私がトポグラフ・マッパー。またの名を、夢原涙子です」
「うそ」
 口を手で押さえるのが遅かった。慌てて口を押さえた僕に、彼女は「本当ですよー。こんななりしてますけど」と笑った。
(だったらもう少し服装を考えてくださいよ。いや、それよりも『またの名を』ってなんですか)
 言いたいことを飲み込んでから手を離すと、袖の下の腕時計が目に入った。
 午後五時三十五分。残りあと、二十五分。
 依頼人であると打ち明けてしまった手前、本当は迷っただけですと言って引き返すこともできない。手短に用件を伝えて帰ろう。走ればきっと間に合う。
「まぁ立ち話もなんですし、お話は中で聞きますよ。散らかってて、なんのお構いもできませんけど」
 はにかむように笑う夢原さんは、束ねたポニーテールを旗のように翻すと、僕を室内へと導いた。

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