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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2016/08/11/Thu
――僕が、探す?
「それって、夢原さんでも手に負えない依頼だからですか?」
 だから、だから彼女はまどろっこしい言い方をするのか。私は探すことはできないから、自分で探しなさいと。暗に伝えたいのか。
 拳を強く握り絞め、彼女の様子を窺う。夢原さんも僕を見据えたまま、首を振った。
「いいえ。私はどんな依頼でも、人の涙から地図を作ります。ですが」
「だったらさっさと作って探してくださいよ!」
 しびれを切らした僕は、テーブルを強く叩いて勢いよく立ち上がった。これでは埒があかない。どうしてはっきり言ってくれないのか。もったいぶった言い方はもうたくさんだ。
「さっきから聞いていれば、なんなんですか? 僕が未成年だからって、高額な依頼料をふっかけるつもりですか? いいですよ? 依頼料ならいくらでも払いますよ! 僕の大事なものと比べたら! だからさっさと!」
「スギウラさん。落ち着いてください」
 夢原さんは僕を見上げる姿勢になっても、重ねた手を離すことも、取り乱す様子もなかった。諭すような言い方が、余計癇に障る。
「……もういいです。失礼します」
 頭の中は熱いのに、背中と足先が寒い。声を荒げるなんて、自分じゃないみたいだ。
 震える拳を握り直して、僕は彼女に背中を向けた。そうだ。僕は帰らないといけないんだ。今から走ればきっと。
「スギウラさん」
 後ろから彼女の声が聞こえた。依頼人が怒って帰るというのに、なぜ呼び止めないのか。お詫びの一言もないのか。
 そんな人に依頼をしようとした僕が馬鹿だった。彼女とはもう、これっきりだ。
「あなたは、本当に大事なものを見つけたいと思っていますか?」

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