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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2016/08/18/Thu
夢原さんは両手を腰に当て、唇を尖らせた。今日の彼女は髪を頭頂部にまとめたお団子頭で、ピンクのツナギを着ていた。これが仕事着なのだと、先日のことを謝罪した時に教えてくれた。
(そして、僕がソファに座ってようやく目線が同じくらいになる小ささは相変わらず、と)
「えっと――『トポグラフィー』は本来、地形とか地勢図って意味があるって」
「それは冒頭。しかも余談です」
「あー」
 頭を掻いて思い出そうとするが、残念なことに、冒頭の余談しか出てこない。
「すみません。もう一度お願いします」
「もう……ふふ、困った人ですね」
 幼い顔で大人っぽく笑う夢原さんが直視できなくて、壁に飾られた白黒写真に目を向けた。
 あれが、僕の求めていたトポグラフィー・マップであると夢原さんは言っていたが、未だにピンとこない。どこをどうしたら地図に見えるのか。あれで本当に僕の大事なものが見つかるのか。
「でもそうですね。ただ説明するだけじゃ飽きちゃいますよね。実際にタカトシくんのマップ作っちゃいましょうか?」
「え? そんな簡単にできるものなんですか?」
 インスタントラーメンを作るのと同じくらいの軽さに驚くと、夢原さんは「いいえ?」と否定した。
「人から出たものから作るので、作成時間に個人差が発生するのは否めません。ですが私は『夢原涙子』の名を冠するプロのマッパーです。迅速かつ丁寧に仕上げてみせますので、大船に乗った気持ちで期待しちゃってください!」
 夢原さんの名前にどんな力があるのか知らないが、彼女のやる気に水を差さない方がいいだろう。僕は素直に「お願いします」と頭を下げた。
「ま、タカトシくんのような方にこそ、マップは必要だと思ってるのは本当ですし」
 もったいぶった言動にもどかしさを感じるものの、そこに彼女の意図があるのだろう。先日のように取り乱さないよう、彼女の言葉に耳をそばだてる。
 夢原さんは僕の姿勢を認めてくれたらしく、後ろで手を組み、確信を持った口調で続けた。
「タカトシくんの場合、他の依頼人の方と違って大事なものに関する記憶がありませんよね。だからこそマップを使って、あなたの中にいる『本当のご自分』を見つけ、大事なものがなんなのか教えてもらうんです」

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