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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2016/08/18/Thu
無事に涙を採ることに成功した夢原さんから、指定された場所で待っているように言われたのだが、あと一分で夢原さんが来なかったら、羞恥心に負けて家に帰っていたかもしれない。
「お待たせしま、した?」
 ようやく来た夢原さんが首を傾げるぐらい、ひどい顔をしているのだろう。自分でも分かる。分かるけど、半分は夢原さんのせいでもあるので、この際言ってしまおう。
「あの、ずっと思ってたんですけど」
「はい」
「……やっぱりなんでもないです」
 麦わら帽子を被り、編み目を崩した三つ編みを両肩から垂らした、白いセーラー服に似たワンピースの彼女になにを言えばいいのか。
 ワンピースの裾には『不思議の国のアリス』のモチーフがプリントされていて、足首の長さの白い靴下と、バレエシューズに見える黒い靴を履いていた。最初に会った時の服装の方がまだマシだ。気持ちとしてはツナギが一番接しやすいのだが。
「言いたいことがあるなら、その時に言わないと駄目ですよ。後出しじゃんけんはかっこ悪いですし」
(こっちは『最初はグー』でパーを出された気分なのですが)
 ため息をつくと、僕は「それはそうと」と話を切り替える。
「マップはできたんですか?」
「できましたよ。でも、探す前にブレイクタイムしません?」
 夢原さんは、さっきから眺めていた立て看板を指さす。待ち時間の内に何往復も眺めたそれは、見ているだけで胸が焼けそうになる。
「僕はいいんで、勝手に買って勝手に食べてください」
「ありがとうございます! すみませーん! 生クリームとフルーツ全部乗せください! お金はこのお兄ちゃん持ちで、もがぁ!」
 僕はフライング気味に彼女の口を押さえ、注文を聞いた店員に首を振って辞退した。
「すみません。普通のいちごで」
「ふぁ! ふがああああ!」
 腕の中で暴れる彼女の拳骨やら蹴りやらを受けながら、顔を引きつらせる店員に注文を押し通した。
ご迷惑をおかけしてすみません。でも僕は許せなかったんです。
 女の子の好きそうなファンシーな装飾とパステルカラーで彩ったクレープショップを待ち合わせ場所にし、曲がりなりにも男性である僕を辱めたこの人のことを。

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