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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2016/08/25/Thu
「そう言うと、アヤちゃんは自分から手を離して、穴の中に落ちていきました」
 僕が話し終えると、夢原さんはマップを拾い、砂が付いた部分を払った。
「話してくださって、ありがとうございます。アヤちゃんとの思い出とタイムカプセルが、タカトシくんの大事なものだったんですね」
 夢原さんが僕にマップを差し出してくれたが、受け取ることができず、マップから目をそらした。
「そして、アヤちゃんの死を受け入れられなかったあなたは、自分の記憶に蓋をしたんですね?」
「違います」
 僕は首を振った。そんな綺麗な理由じゃない。僕がずるくて悪いから、アヤちゃんとの思い出に蓋をしたんだ。
 だって、このことが知られたら、僕は。
「分かりました。じゃあ探しにいきましょう」
「え?」
「『え?』じゃないですよー。アヤちゃんとの約束を反故にするつもりですか? 日が高いからといって、気を抜いているとすぐ暗くなるんですから」
 夢原さんがマップを持って立ち上がると、繋いだ手を引かれ、僕も必然的に立ち上がってしまう。
「いや、その、そういうつもりはないんですけど」
「じゃあなんですか?」
 歩き出す手前で立ち止まり、夢原さんが僕を見上げた。僕も彼女にぶつかりそうになりながら止まる。
「僕が大事なものを忘れた理由を聞かなくていいんですか?」
「だってタカトシくん、言いたくないんですよね。だったら言ってくれるまで待ちます」
 なぜ、どうしてと聞く前に、夢原さんは僕にマップを突きだした。
「夢原さん?」
「トポグラフィー・マップは、涙を流した人にしか読めないんです。マッパーはマップを作ることはできても、マップは読めないんです」
(もしかして、最初に夢原さんの元を訪れた時、夢原さんが言いかけたことって……)
 彼女は僕に、そのことを伝えたくてあんな言い方をしたんだ。
「でもまだ、どうやって見たらいいか分からないんですけど」
「見方はタカトシくん。今のあなたなら分かっているはずです。だってこれはあなたの涙――あなた自身なんですから」
 僕の中に、読めるという確信はない。でも、夢原さんがそう言うなら、読める気がする。僕の中の『本当の自分』を。
 僕がマップを受け取ると、夢原さんは手の平を上にして、僕のマップを示す。
「さて、タカトシくん。あなたは何を思って涙しましたか?」
 夢原さんの微笑みと、アヤちゃんの快活そうな笑顔が重なった。

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