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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2016/09/02/Fri
僕はあの時、何を思って涙を流したのだろう。
 公園を出た僕と夢原さんは、高台へ続く階段を上っていた。読める気がすると言っても、あくまでも気がするだけでやはり確証はなかった。
『取り敢えずマップは風景の形をしているので、似た風景の場所に行きましょう』
 僕一人だけだったら、いつまでもマップとにらめっこしていたかもしれない。夢原さんには本当に頭が下がる。
 マップをひさしにして階段を上りきると、なるほどマップと似た風景が広がっていた。町並みは同じだが、雑木林か森が広がる部分は伐採され、空き地が広がっていた。
 どうでしたか、と夢原さんも横からマップを覗き、実際の風景と見比べた。
「一部は変わってますが、ここで間違いないようですね」
「はい」
 僕は夢原さんの横顔を見ながら、あのことを打ち明けるべきか考えた。いや、考えるまでもない。ここで打ち明けなければ後悔する。
 夢原さん、と僕が呼びかけたのと、それは同時にやってきた。
「ケンジ?」
 背筋を冷たい手で撫でられ、反射的に振り返った。
 ――父さん?
 なぜ父さんが、花束を持ってここにいるのだろう。それを尋ねようとするも、口がうまく動かない。ぱくぱくと、金魚のように開いたり閉じたりする。
 父さんも目を見開いて驚いていたが、やがて納得したような声を出した。
「そうか。お前もアヤちゃんの墓参りに来たのか」
『父さん、明日は帰りが遅くなるから。食事は先に済ませてくれ』
 帰りが遅いというのは、墓参りのことだったのか。
(でも、どうして?)
 父さんはアヤちゃんの死を知らないはずだ。だって僕が、
「タカトシくん。だいじょうぶですよ」
 夢原さんのささやきが聞こえた。冷たい背中も温かくなり、今まで感じたことのない安堵を覚えた。
 首を後ろに回すと、夢原さんが僕の背中を押して、静かに笑っていた。

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