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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2016/09/02/Fri
「父さん。今まで隠してて、ごめんなさい」
 僕は先に階段を下りていく背中に頭を下げた。
「いや、父さんも悪かった。お前を厳しく育てようとして、どこかで間違えてしまったんだ」
 父さんは背中を向けたまま言うと、階段を降りきった。僕も階段を降りきり、父さんの隣を歩いた。
「いつから気付いてたの?」
「お前が大泣きして帰ってきた時だ。体中泥だらけで、ただ泣きじゃくるばかりだった」
「よく気がついたね」
「親だから。と言いたいが、本当はお前とアヤちゃんが連れだって遊びにいったことを、母さんから聞いていたんだ」
 そっか、と呟いた言葉にため息が混じった。僕は最初から、父さんに分かる嘘をついていたんだ。
「だがその時のお前は、どこで遊んでいたのか、誰と一緒にいたのか、頑なに言わなかった」
「ごめんなさい。僕は――父さんに、怒られるのが怖かったんだ」
 父さんから小さく息を飲んだ音が聞こえた後、「そうか……そうだったか」と返した。
 頭の中で、さっき父さんが言った言葉が繰り返す。
『お前を厳しく育てようとして、どこかで間違えてしまったんだ』
 僕がアヤちゃんのことを打ち明けられなかったのと同じくらい、父さんは僕のことで苦しい思いをしていた。母さんとの離婚も重なって、僕との会話が減り、僕も僕で、父さんを『父さん』と呼べなくなってしまった。
「父さん。事故現場って、あの空き地なんでしょ?」
「ああ」
「タイムカプセルは?」
「アヤちゃんのご家族が持っていると思う」
「そう」
「……中にはアヤちゃんがお前に作った、金メダルが入っていた。裏に、『いつもがんばるけんじへ』と、書かれていたのを覚えている」
 僕が立ち止まると、父さんも数歩先で止まり、振り返った。
「父さん。明日改めて墓参りに行こう。その後僕、アヤちゃんの家族に会いにいってくる」
「……一人でか?」
 父さんの表情に不安が浮かんだ。あれが事故だったとしても、僕ら家族を恨む気持ちはあるはず。父さんはこれを懸念しているんだ。
「うん――だいじょうだよ。僕、父さんの子だもの」
 なるべく平気な顔で言いたかったけど、途中で歪んでしまった。情けない顔を隠すように涙をぬぐうと、父さんの手が、僕の頭をぎこちなく、けれど優しく撫でてくれた。

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