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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2016/10/01/Sat
「具合、どうですか?」
「へーきへーき。普段より飲んじゃっただけだし」
 戻ってきた女の子からコップを受け取り、一気に飲み干した。味覚までおかしくなったのか、口の中に優しい甘さが広がる。
「お水に蜂蜜を入れました。蜂蜜には、肝臓でアルコールを分解する力を速める効果があるんです。二日酔いでつらい時、スプーン一杯分の蜂蜜を舐めるだけでも効果がありますよ」
 ユリカは目をしばたたかせ、可愛い声でうんちくを語った女の子を見た。なぜこんな女の子が悪酔いや二日酔いの解消法を知っているのだろう。お酒好きの父親から聞かされたとしても、効果まで説明できるのはおかしい。
 そもそも、女の子が深夜、うんちくを語るほどの余裕を持ってこんな場所にいるはずがない。
「あんた」
「はい?」
 いくつなの、と聞きそうになって、慌てて口を噤んだ。やはり暗くてよく見えないが、相手は背が小さくて声が可愛いだけの『女性』ということもありうる。似たような子がお店にいたことを思い出し、ユリカは脱げたハイヒールを履き直した。
「なんでもない。それよりありがとう。おかげで酔いが吹っ飛んだ」
 立ち上がり歯を見せるように笑うと、相手から安堵の声が漏れた。
「よかった。ああ、そうそう。蜂蜜は口臭予防にもいいので、ぜひお試しください」
「ははっ。なにそれ、通販番組みたい」
 思わず噴き出してしまったが、彼女も気を害した風ではなく、「そうですね」という言葉に笑い声が混ざっていた。
 できることなら、もっと明るい場所で会いたかった。そうすれば同じように噴き出す姿を見ることができたかもしれないのに。
「ねぇ。名前は?」
 気がつけば、相手に名前を尋ねていた。こんな短い時間で、もっと話をしてみたいと思える人に会ったのは二度目。名前も聞けずに会えなくなってしまうのは一度目でたくさんだ。
「夢原涙子です」
 ユメハラ・ルイコ。可愛い声の『女性』に相応しい、夢のような名前だと思った。

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