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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2016/12/13/Tue
「で、なんとなく話しかけづらくて、しばらく眺めてたんだけど。あ、悪い意味の話しかけづらさじゃなくて、なんか圧倒されるなーって感じのヤツね」
 そこまで説明すると、ユリカは夢原が用意してくれたお茶で喉を潤した。話に耳を傾けていた夢原も、「なるほど」と相槌を打ってからお茶に口を付けた。
 掲示板に書かれた住所を頼りに、ユリカは無事に夢原と再会することができた。でもまさか、地下にこんな事務的な空間が広がっているとは思いもしなかった。
 夢原と挟んで座っている応接用のテーブル。分厚いファイルを収めた棚。ユリカは夢原の机やパソコンから、高校の職員室を思い出した。座っていたのは担任と教頭、そして騒ぎを起こした娘のせいで呼び出された母親だったが。
 小さい流し台と小さな冷蔵庫は、騒ぎの中で怪我をし、職員室の前に連れて行かれた保健室を思い出した。
 唯一違うところといえば、顕微鏡で見た雪の結晶のような、どこかの地表を撮った白黒写真が貼ってある壁。
 これが人の涙で作った地図こと、『トポグラフィー・マップ』なのだと、夢原が教えてくれた。
「お話したのは、その冬の一度きりですか?」
「ううん。卒業式の前日まで喋ってたよ。それが最後だったかなぁ……」
 あっけらかんと答えたつもりだったが、寂しさが表情に出てしまったのかもしれない。夢原がユリカの寂しさを包むような、どこか母性を感じさせる微笑みを浮かべていた。
 頭頂部で一つにまとめたお団子頭に、胸元に黒猫のワッペンが付いたピンクのツナギの夢原は、外見こそ小学生ではあるが、中身は確かに大人だった。
 再会した時こそ驚いたものの、仕草や言葉のトーンが大人の女性であるとユリカは察した。多少の茶目っ気も、大人の女性の余裕から来ていることが窺える。
 しかし、身構えることなく話を聞いてもらえるという安心を感じる反面、物足りなさも感じていた。
(うーん。話の受け答えも雰囲気もバッチリだし、なんでもそつなくこなしてるし、女友達としては楽しいんだけど……じゃあこの物足りなさは男性から見たらってことかな?)
 ユリカは膝の上で頬杖を付き、じっと夢原を見つめた、夢原もユリカの視線に気付いて、不思議そうな顔で首を傾けた。
「ハヤマさん?」
「夢原さんってさ、隙がないよね」
 半ば決めつけるような言い方に、合点のいかない夢原は「はぁ」と曖昧な返事が返ってきた。
「あ、これはあたしから見た印象なんだけど、なんていうか、未だに男性って隙のある女性に弱いから、夢原さんも隙を見せたら、男性にモテるんじゃないかと思ってさ。こんなに可愛いんだから、モテないわけはないんだろうけど」
 最後は付け足しのように言うと、夢原は言葉を詰まらせ、初めて狼狽する姿を見せた。手に持っているタブレットを持ち直したり、視線を斜め下に下げたり。
「あ、ごめんごめん。もしかして気にしてたとか?」
 元キャバ嬢時代に築いたスキルが不発に終わったというより、思ったことは口にしないと気が済まない自分の性格が仇になったか。
 だが、夢原は首を振った後、えへへ、という照れ笑いのような、見ているユリカでさえ気恥ずかしさに悶えそうになる笑みを浮かべ、小さい体をさらに小さくさせた。
「いえ、謝るのは私の方です。そんなこと、言われたことも、考えたこともなかったので……その、恥ずかしいですね?」

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