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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2016/12/22/Thu
ユリカの故郷は海沿いにあるため、毎年新鮮な魚介類が打ち上げられ、その中から選別された高級品だけが都会に送られる。
地元の人が見るのも嫌なぐらい食べ飽きたものを、なぜ都会の人は食べたくて食べたくて仕方がないのか。上京したばかりの頃は不思議で仕方がなかった。
 夢原にウニ丼の話を振った時も、「結構です。都会の方が良いウニが食べられるから」と言われることを想定していた。しかし、当の夢原は現在、道の駅の食堂でウニ丼を食べ進めるごとに、恍惚の表情を浮かべていた。
「んふふ~。確かに高級ウニもいいですけど、やっぱり地元のウニを食べなきゃ駄目かなって」
 きっと都会人特有の使命感なのだろう。幼い顔立ちを最大限に活かした無邪気な笑顔に、「ああ、そうなんだ……」と曖昧に返したユリカは、紙コップに注いだコーヒーを飲み干した。
「ところで、バスの時間大丈夫ですか?」
「あと三時間くらいかな」
「さすが田舎」
「それ褒めてないでしょ」
 歯を剥き出してみせると、ウニ丼を完食した夢原が「バレました?」と笑いながら、ナプキンで口元を拭いた。
 夢原とは随分打ち解けた気はするものの、未だに謎が多い。どちらかというとがさつなユリカでも分かるくらい所作が綺麗なため、故郷へ向かう新幹線の中で夢原に尋ねてみた。
『夢原さんって、どこかのいいとこ育ちなの?』
『いえ。ごくごく普通ですよ。母が礼儀作法にうるさい方でしたけど』
『へえ。あたしはおじいちゃんが厳しくてさ――』
 そこまで話は進んだものの、途中から、夢原の表情が少し曇った気がした。触れたくない話だったのだろう。ユリカの謝罪にも笑顔で受けてくれたが、笑顔も普段より引きつっていた。
「ここは贅沢に、タクシーで移動しますか」
 ユリカが席を離れて紙コップをゴミ箱に投げ入れると、夢原はどんぶりを乗せたトレーを返却口に入れ、小走りでユリカの後に付いた。
 千鳥格子のブラウスとスカートの上に白い毛糸で編んだポンチョを被り、下は黒いニーハイソックスとキャメル色のレースアップブーツ。
お団子頭もいいが、ゆるく束ねたおさげの夢原も可愛いな、とユリカは思った。
 二人は外で待機していたタクシーに乗り込むと、アーケード商店街へ行くよう運転手に伝えた。車内はローカルのラジオ番組が流す軽快な音楽で満たされていた。
『それではここでゲストをご紹介いたします。シンガーソングライターとして活動中のクサカベ・トモさんです』

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