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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2017/01/26/Thu
夢原の事務所を出た俺とタカナシは、午後二時過ぎを示した時計に誘われるまま、近くのラーメン屋に入った。
 ニシムラ・リュウジの事件は今朝のニュース番組にだけ流れたらしく、今は時事問題のあれやこれやについて、コメンテーターがテレビの奥で熱く語っていた。
「なんか……状況が前進したのか、状況が停滞していることが分かっただけなのか、よく分かりませんね。あー、疲れた」
 カウンターに腰掛けるなり、タカナシが腕を伸ばしながら言った。両腕の関節や肩がバキバキと音を鳴らした。まだ二十代だろうに、俺より年寄りみたいだ。
 ついでに首を回したタカナシは、壁に貼り付けたメニューを一望する。俺もメニューを眺めながら、今までのことを整理した。
 ニシムラ・リュウジは『自分の気持ちを確かめたい』という理由で、夢原にマップの作成を依頼した。俺とタカナシ、そして作成者である夢原は、『マップには縛られていたものに対する開放感はあるものの、高揚感はない。それどころか、もの悲しさすら感じる』という見解でまとまった。
 発達障害の姉の世話から解放されたのだとしても、マップを破り捨てた理由が分からないし、タイミングも辻褄も合わない。
 さっきは失踪した被疑者は開放感に満たされ、どこかでのうのうと生きていることに対して、一抹の怒りと危機感を覚えたが、これもタイミングを考えると、やはり辻褄が合わない。
 となると、問題は事件前日ではなく、事件当夜に集中する。あの夜、あの二人に何が起こったのか。
 ニシムラ・リュウジが確かめたかった『自分の気持ち』が、俺と同じものだとしたら。
「タカナシ。お前に兄弟はいるか?」
「いえ、一人っ子です。ちなみに言うと母子家庭です」
 注文し終わったタカナシに話しかけてから、はたと気付いた。俺はタカナシの、部下以外の顔を知らなかった上に、失礼なことを聞いてしまった。
「そうか。聞いてすまなかったな」
「全然構いませんよ。ウチの両親はどっちも血の気が多くて、売り言葉に買い言葉で円満離婚しました。どちらも手は上げませんでしたけど、口喧嘩とか、中指を立て合って牽制し合うとかは日常茶飯事でした」
 あっけらかんと「そのおかげで離婚裁判は短期間で終わりましたけど」と言う、タカナシの神経の図太さと、上司にも臆しない態度の理由が分かった気がした。タカナシの話のどこに『円満』の要素があるのか、過ぎたことは詮索しないに限る。
「急にどうしたんです?」
「今回の件は姉弟絡みだからな。なんとなくだ」
「じゃあ、次はおじ様のご兄弟のお話が聞きたいですねー」
 後ろから夢原らしき声が聞こえたようだが、空耳だと信じて塩ラーメンを注文した。
「シクシク。タカナシさん、おじ様にスルーされました……私、なにか失礼なことしましたか?」
 泣き真似でタカナシにすがる夢原もそうだが、「今日のホズミさんは虫の居所が悪いんですよ」と平然と返すタカナシもタカナシだ。この二人はどこまで似ていれば気が済むのか。

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