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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2017/01/26/Thu
三度目の嘆息の後、仕方なく夢原を見遣った。
 水色のジャンパーに白いタートルネック。裾に白いボアが付いたショートパンツ。黒い編み上げブーツを履き、髪は束ねずにおろし、頭にうさ耳のような水玉模様のバンダナを巻いていた。
「おじ様、どうです? 可愛いでしょ?」
 さっき浮かべていた微笑みとは真逆の、醜悪な笑みを前に自分の顔が引き攣るのが分かった。タカナシは夢原の笑みに気付いていないか、お得意のスルーで「可愛いですよ」とコメントしたが。
「んふふ、ありがとうございます。おじ様はいかがですか?」
「自分で自分のこと可愛いって自覚のある奴に、今更『可愛い』って言ったって意味がないだろ」
 注文の塩ラーメンが来たので、割り箸を割って早々に食べ始めた。
「本当、今日のおじ様は虫の居所が悪いですねー」
 人のことを仕方がない子みたいに言うなと思いながら、タカナシの隣に座ろうとする夢原に釘を打つ。
「夢原。飯は単品で頼めよ。トッピングはなしだ」
「えっ、なんでですか!? ここのラーメン屋さんは初めて来ますけど、メイン料理よりトッピングの方が美味しかったらどうしてくれるんですか!」
「どうもしねぇし、店に謝れ」
「それ分かりますよ夢原さん!」
「お前は黙って食ってろ。巡査部長昇格祝いだ」
「ありがとうございます!」
 タカナシは注文した豚骨ラーメン(チャーシューと味付け煮卵のトッピング付き)の前で箸を割り、夢原から羨望の眼差しを受けた。収拾が付いたところで、俺も飯にしよう。
 伸び始めた塩ラーメンに箸を伸ばしかけた時、懐の携帯が震えた。着信は、シバタ課長。
 タカナシに一言伝え、店の外で電話に出た。
「はい。ホズミ」
『ああ良かった。被害者のニシムラ・ハナが意識を取り戻した。昼飯時ですまんが、大至急タカナシと一緒に病院へ行ってくれ』
 電話越しの課長は息が荒く、事態の急転に慌てているようだった。了解、と短く答え、店に戻る。
「課長がなんと?」
「被害者が意識を取り戻したそうだ。すぐ病院へ行くぞ。夢原は俺とタカナシの分のラーメン食って大人しくしてろよ」
 タカナシがトッピングだけ口に放り込むのを見ながら、俺はカウンターに紙幣を数枚置いてコートに袖を通す。ようやく事件が動き出す。被害者の証言が取れれば、被疑者の居所も掴めるかもしれない。
「おじ様」
 慌ただしく身支度をする俺の耳に、夢原の声が凛と届いた。
「ご武運を」
 夢原の目はいつも真っ直ぐで、相手を射貫くというより、優しく包むような母性を感じないでもなかった。感じないでもないということは少しは感じているということで、断じて、けして全部そうだとは思っていない。
 ただ、俺も無益な殺生とやらは避けたいと思っているので、「ああ」とだけ返したが。

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