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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2017/01/26/Thu
病室での阿鼻叫喚は、無益な殺生とやらに入るのだろうか。
 俺とタカナシが被害者のニシムラ・ハナの元へ駆けつけた時には、被害者は鉄製のベッドフレームに自分の腕を打ち付けたり、手近のティッシュ箱を投げたり、看護師の制止を振り切って立ち上がろうとしたり。
 暴れている間中、彼女は弟の名前を叫んでいた。
「リュウちゃんっ、リュウちゃんどこにいるの! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ、あたしが悪いの! あたしが生まれてきたらリュウちゃんはっ、リュウちゃんはっ!」
 狼狽している他の看護師に聞くと、目が覚めてからずっと錯乱状態に陥っているのだという。
「ニシムラさんっ、ニシムラさん落ち着いてください!」
「リュウちゃん! リュウちゃんリュウちゃんリュウちゃんっ……リュウちゃ……」
 弟の名前を叫びながら、最後には力なく崩れ、彼女は膝を抱えてグズグズと泣き始めた。
 気分が悪い。腹立たしい。俺は奥歯を噛み締め、眉間に皺が寄せた。被疑者、ニシムラ・リュウジに今の彼女を見せてやりたかった。首根っこ引っ掴んででも。刑事であることを忘れてぶん殴ってでも。
「ホズミさん。もしかして……」
 状況を察したタカナシが俺に耳打ちをする。前言撤回。癖は強くても、有能な部下は持つものだ。
 首根っこ引っ掴むことも、個人的な感情でニシムラ・リュウジをぶん殴ることも、刑事である俺にはできない。
 それ以前に、暴力的なやり方では、この事件は解決しない。タカナシより先に前に出ると、被害者、ニシムラ・ハナの前に立った。
「ニシムラ・ハナさん。昨夜のことを教えてください。あの夜、あなたと弟さんに何があったのか」
 彼女はまだ目を覚ましたばかりだからと、看護師の制止が入ったが、タカナシがうまく収めてくれたようだった。
 被害者は膝から顔を上げると、「リュウちゃん? リュウちゃんがどこにいるのか知ってるの!?」と俺に食ってかかった。
「現在捜索中ですが、今のところ手がかりがありません。あなたの証言にかかっています。お辛いでしょうが、思い出せることから話してください」
 彼女の嗚咽の上に俺の声が乗った。俺の言葉が終わると、彼女の嗚咽だけが病室に響いた。
「リュウちゃん……リュウちゃん、は……あたしに言いたいことがあるって言って……」
 ニシムラ・リュウジは事件前日に夢原の作成したマップを入手しており、昨夜の時点で自分の気持ちを確認済み。俺の読み通りであれば、すぐ彼女に自分の気持ちを伝えただろう。
「もし……もし、姉さんのこと、愛してる……って言ったら、どうするって?」

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