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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2017/01/29/Sun
「なるほど。出歯亀とは、さすがタカナシさんですね」
「お前も感心するな。立派な職権乱用だ」
 ニシムラ・リュウジの身柄を警察署に送った後。昼食を買いにタカナシとコンビニへ入る手前、例のツナギにダッフルコートを羽織った夢原と出くわした。
「ふふ。タカナシさん、そういうのお上手ですからね」
「本人に言ってやるなよ。ただでさえ調子に乗ってるんだから」
 タカナシは先にコンビニへ入り、アンパンと二百ミリリットルの牛乳パックを手に、会計の列に並んだ。まったく、昔の刑事ドラマじゃなるまいし。
 外からコンビニの店内を眺めながら、俺は口を開いた。
「……姉さん、いつまでこんなことを続けるつもりだ」
 隣にいる相手に聞こえる程度の声で言ったつもりが、声のトーンから俺が怒っていると思ったらしく、夢原――姉さんは「心配かけてごめんね」と言った。
 別に謝ってほしいわけじゃない。俺は後ろ頭を掻き、言葉を探す。
「いや、俺はただ、姉さんには静かに暮らして欲しいと……」
 どもってしまった俺と、小さい姉さんの姿がガラスに映る。姉さんは、困ったように笑っていた。
 俺は、ニシムラ・リュウジのような言葉をかけることはできないし、言葉にするにも時間をかけ過ぎた。
 その時間は、俺と姉さんの間に壁を作った。俺は老いに向かって歳を重ね、姉さんだけ、あの頃の姉さんのまま。だから、俺もあの頃の俺で接することはできない。
 もし、ニシムラ姉弟のように、俺も姉さんとずっと一緒にいられたら。もし、俺がホズミの家に養子として行かなければ。俺は、姉さんを救うことができただろうか。
 腹立たしい。現在が。今の姉さんが。何もできない自分が。本当に腹立たしい。
 奥歯を噛み締めていると、タカナシが会計の先頭に立った。それを見計らうように、姉さんは両手を後ろに組んで、俺の懐に飛び込んできた。
 喉の奥から変な声が出て、一瞬心臓が止まった気がした。姉さんの体を支えようと腕を伸ばしたが、力が入らなかった。
「姉さん。馬鹿な真似はよしてくれ」
「なにが馬鹿なものですか。もうこんな機会はないのよ?」
 力なく項垂れる片腕を持ち上げ、手で顔を覆った。こんなところ、タカナシに見られたらどうするつもりだ。
「人の気を知ってて……本当に、姉さんはずるい」
「んふふ~」
 顔をぐりぐり押しつける姉さんを、俺は受け入れることも、突き放すこともできない。情けない。こんな顔、誰にも見られたくない。

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