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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2014/08/21/Thu
「生きにくい世の中だな」
 あなたはぼやくように言った。くゆらせた紫煙が高く上り、ビル風によってかき消される。この繰り返し。眺めているのも飽きた頃、わたしは「仕方がないだろう」と、半ば呆れた声を返した。
 何もかも今更で、今頃口にする言葉じゃない。「仕方がない」で片付けたわたしにしてみれば、未だに食い下がるあなたの方がおかしい。仕方がないのだ。あなたが、あなた自身で、あなたのせかいを「生きにくく」させたのだから。
 それを、さも世の中のせいにするような言い方だったので、「あなたもいい加減諦めたらどうなんだ」と、言葉の後に続けた。きっと、わたしは苛ついているのかもしれない。体は同じ場所にいるのに、心だけ、違う場所にいるあなたに。
「もう、終わったことじゃないか……」
 わたしの言葉では、あなたを止めることも、終わらせることもできないのか。
「まだ終わっちゃいない」
 あなたは言う。何度目かのビル風に煽られた声を拾い、ジャケットの内ポケットから取り出した携帯灰皿に、短くなった煙草をしまいながら。
「彼女はまだ生きている」
 携帯灰皿にプリントされた犬のイラストを見遣る。恐らくプードルだろうと目星を付けるぐらいに剥がれ落ちたそれを、親指で拭うあなたの癖。
 あなたのせかいで生きていた彼女からのプレゼントであり、あなたの言う「生きにくい世の中」へ行ってしまった彼女の、

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