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遥飛蓮助の一次創作ブログ
2015/03/22/Sun
(使用したお題:桜の木の下で・三角の愛)
(久々のワンライも大遅刻ですorz)


私の好きな人は、私の幼馴染みが好きなホモでした。

「紺野」
 教室の外から、松田の声が飛んできた。私の名字だ。席から立ち上がり、切ったばかりのボブを手櫛で整えて、めんどくさそうな顔と声で応える。
「なに」
「高橋。どこいるか知ってる?」
 黒の短髪。茶髪が多い学校で、松田の頭は逆に目立つ。一重の目が、ワックスで髪を弄りすぎた男子共の中から、金に近い茶髪の高橋を探している。
「教室にいないの知っててあたしのこと呼んだんじゃないの?」
「まぁそうなんだけどさ。ほら、いたらめっけもんかなと」
「なにそれ」
 高橋は棚ぼたかよ。そうツッコミを入れて笑う松田にとって、高橋はある意味棚ぼたかもしれない。告白もしないで両想いになれるとでも思ってんのかこのホモは。ああ、ホモだから告白出来ないのか。残念残念。ばーかばーか。
「で、あいついるとこ知ってる?」
 人懐こそうな顔の松田と目が合う。私はできるだけ、つっけんどんに。
「知らない」
 そっぽ向いたら、慣れないボブが襟足を撫でた。気持ちが悪かった。

 桜の木の下に高橋がいる。春になると必ずあいつはそこにいて、寝っ転がって桜を見上げる。
「花さかジジイ。生きてるか?」
「あ、紺野か。びっくりした」
 そんな高橋の顔を覗き込むのは何度目だろう。高橋も慣れたもので、びっくりしたと言いながら、さも当たり前に応えた。目は桜を見つめていた。
「松田がお前のこと捜してた」
「そっか」
「行かなくていいのかよ」
「あいつからのメールないし。大事な用じゃねぇよ」
 馬鹿。松田はあんたが好きでたまんないから、用がなくても会いたくて捜してんだよ。それくらい察しろ。
「だからお前は馬鹿なんだよ」
「は? 意味分かんないし」
 高橋の非難を流して、私も隣に寝っ転がる。学校の、立ち入り禁止区域にあるのがもったいないくらい、満開だった。
「そっちはどうだったんだよ」
「なにが?」
 首だけ動かして高橋を見る。金に近い茶髪に桜の花びらがついていた。
「昨日俺、松田はボブ女子が好きだって教えたじゃん」
「で? まさかあんた、あたしがあんたの言ったこと鵜呑みにして、昨日美容院で切ってきたと思ってんの?」
 思わず鼻で笑った。そんなことあるわけないじゃん。たまたまだし。たまたま、急にロングに飽きただけだし。襟足に毛先がかかって気持ち悪いけど、切るって決めたの自分だし。偶然ですよ偶然。
「ばーか。ていうかキモい。死ね」
 言葉を高橋じゃなく、視界に滲む桜に投げつけた。どいつもこいつも馬鹿だ。ホモだからって高橋に告白しない松田の馬鹿。松田の好意に気づかない高橋の馬鹿。ホモの松田が高橋のこと好きなの知っても松田が好きで、知ってるからこそ告白しない私の馬鹿。
「紺野」
 みんなみんな、大馬鹿だ。
「なんで泣いてんの」
「ち、違うし、これ、心の、汗、だし……」
 両腕で顔を隠して、高橋にも桜にも溢れる涙を隠して、私は泣いていた。どうりで桜が見にくくなったわけだ。
「馬鹿みたいに泣いてるくせに」
「うっさい、馬鹿に、馬鹿って、言われたくない、わ!」
 隣から服のすれる音と、草の動く音が聞こえた。こいつ、ここぞとばかりに私の泣き顔見ようとしてるな。
「み、見んな、よ」
「見ないよ」
 このタイミングで言うことじゃないけど、そのままで聞いてほしいんだけど。高橋の声が上から聞こえる。私はそっと、顔から両腕をずらした。
「俺、お前のこと好きなんだけど」
 真剣な表情の高橋が、私に覆いかぶさるように、四つん這いになっていた。

 後のことは、鮮明に覚えている。
 頭に血が上った私は、奇声を上げながら高橋の急所と腹を蹴って。
「ふざけんじゃねぇぞこの童貞が! 死ね! 死ね死ね死ね死ね死んじまえ!」
 素早く立ち上がって、痛みに悶絶して転がる高橋に罵倒を浴びせて。
「みんな死ね! 馬鹿はみんな死ね! あんたも松田もあたしもみんな死ね!」
「まつ、だ?」
 なんで松田が出てくるのかと、高橋の唖然とした顔が滑稽で。
「そうだよ! ホモだからって高橋に告白しない松田も! 松田に好かれてるって気づかないままあたしに告白したあんたも! あんたに好かれてるって気づかないまま松田を好きになって! 松田が高橋のこと好きだからって告白しないあたしも! みんなみんな死んじまえ!」
 喉が痛くなるぐらい叫んで。声が涸れるぐらい喚いて。上がった息を整え、高橋を睨みつけた。腰が抜け、血の気が引いた顔が引き攣ったように見えた。
「おい。松田がホモだってこと、誰にも言うなよ」
 高橋が頭をガクガク上下に動かしたのを確認してから、掠れた声を低くして。
「あと──次に好きって言ったら、殺すからな」

 その時、口元に入った涙の味を覚えている。今までで一番しょっぱくて、苦くて、切ない味だった。

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