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一、夜の蝶だった頃③

キャバ嬢とは、お店で一番になってやるだの、稼ぎまくってお金持ちになるだのといった野心がなければやっていけない職業だと思っていた。
 実際はその通りなのだが、小さい頃から男の子と遊ぶのが当たり前で、気に入らないことがあればすぐ食ってかかるはねっかえりだった自分が、まさかお客さんのつまらない話に笑顔で相槌を打ち、お客さんと食事をしてからお店に出たりしていたなんて。
 新人時代にボーイにいびられていたせいで反骨精神に火が付いたのもあるが、元々物怖じをしない性格も手伝って、お店ではある程度の地位をキープしていた。
 会話力を鍛えることができ、お店の先輩からお客さんの誕生日や好みはメモに取った方がいいと言われて以来、すぐメモを取る癖がついた。
 ユリカにとって得る物の多い仕事をなぜ辞めてしまったのか。きっかけは、先月お店を辞めたカナコだった。夜はお店で働きながら、昼は派遣社員として働いていたカナコに、ユリカはお酒の席で辞めた理由を尋ねた。
『必死になって稼ぐ必要もなくなったからかな? 前よりキャバ嬢の給料も下がってきたし、ここで派遣社員一本にしようと思って』
 カナコにはお店で働く前から付き合っていた彼がいた。結婚資金を稼ぐために二足のわらじを履いていたこともユリカは知っていた。その彼と別れたことで、これからは堅実に働こうと決めたのだという。

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